早川  一味(住職)

大寿山玉林寺の住職として勤めていたが、現在は息子にその座を譲り、東道様としてお寺の案内や資金管理をしている。


 

―20歳の頃、どんな生活を送っていましたか。

 

二十歳ごろ言ったって二十歳ごろは学生でしょう?私ら一緒だもんね。大学二年ぐらい。

 

まぁ、その時は私ら寮生活でね、朝も六時に起きて座禅をしてお参りして。お参りするところの場所があるんですわ。大学の中に。ですから、朝のお勤めをして、で、掃除をしてそれでもう学校へ行く。

 

 

―どこの大学へ行っていたんですか。

 

駒沢大学でね、仏教科というところですわ。他の学部もあるんですけど。まぁ、生まれたときから歩く道は決まっとるもんでね。

 

 

―自分が後を継ぐと決まった時の気持ちは?

 

そりゃね、中学校までは色々と悩みますよね。葛藤もあったし。でも、高校に入った時にはもう心を決めてましたね。大変なことは見てるからねずっと。一人っ子なもんでね、周りはもう後を継ぐんだと思うわねそりゃ。お寺に生まれた人でも自分のやりたいこともやって後を継がない人もいるんだけどね。うちの父親は小学校四年のときにこのお寺に何も知らないまま連れてこられたんだよね。高校のときは迷いはなかったね。

 

 

―高校の時は部活してたんですか。

 

帰宅部だったわ。

 

 

―修行していくうえで一番つらいと思ったことは?

 

大学卒業してから修行が始まるんだけどね、身体的にも精神的にも辛いと思うのは、朝からずっと座ってるもんでね、足が痛い。そして腹が減る。それから眠い。もう朝4時に起きて座禅をしてお経を読んで朝のお勤めしてそれから朝ごはん食べて。朝ごはんって言ってもおかゆだけどね。あとゴマ塩と。食事が終わったら掃除だわね。こんな食事しとるもんでね、ビタミン不足でかっけという病気になるんですわ。

 

 

―かっけ?

 

もう栄養不足で皮膚を押したら戻ってこないんだよね。

 

 

―テレビとかでみる滝に打たれるみたいなことはしたんですか。

 

あぁ、滝行ね。それはないね。宗派によって違うんだわ。私らは、座禅のみの宗教なもんでね、朝と夜の二回やる。集中でやるときは一週間ぶっとうしでやるんだけどね。トイレと食事以外はずっと座ってるからもう足がしびれて立てなくなっちゃうんだわ。それで、警策(きょうさく)でたたかれるでしょ?あれが痛くてね、腫れちゃうんだわ。また、その腫れた後をまた叩かれるもんでね、そりゃ痛いわね。

 

 

―修行中自分の好きな時間とかあるんですか。

 

なかったね。覚えることがいっぱいでね、寮でね、決まり帳といってね、それを全部書いて写して覚えるんですわ。あと、講義もありましたよ。そういう時間もある。だから、禅宗はね、そういった滝行みたいな荒行はないね。でもずっと座ってるのも大変だけどね。

 

 

―座禅してる時ってどんなこと考えてるんですか。

 

無になるように気持ちを持っていくんだけどね、どうしても考えてしまうもんだわね。だから数側管、数字を数えるってことはするね。寝るときみたいに。

 

 

―普段、お寺の住職として気を付けていることはありますか。

 

まぁ、お寺というのは、修行生活も同じですけど、掃除なんだよね。掃除を一番重要視する。まぁ、掃除というのは心もそうなんだよね。修行だしね。心の掃除。身も心もなんですけど、清らかになるっていうのが目的なんだよね。ただ、きれいにするってことだけではなしに、また、お寺にお参りに来てもらった方にも清らかな気持ちになってもらう、安らかになってもらうってことが私らの一番思うことだわね。一にも二にも掃除だね。

 

あと、布施ってあるでしょう?相手に施すこと。そういう時になにかをしてあげて見返りを求めるというのはしてはいけないんだよね。

 

 

―そういう心構えは高校生の時から考えてたりしたんですか。

 

そんなことはまだまだ。そん時は全然考えてなかったね。教えられてからだね。というか社会は競争ですから相手を蹴落とさないといけないでしょう?大学受験なんてね。だからその時は全然。

 

 

―お寺の前に書いてある文章は法城様が考えて書いてるんですか。

 

あれはね、色々本を読むもんでね、本の中で「あ、これはいいものだ」っていうのを選んで、自分で書いているんだよね。本を読むといろんな言葉が出てくるじゃん?そこから考える。本の中でいいと思うことをね。怒られることもあるんですよ?字が間違っとるとかね。だからメモしとくだがね。前の方丈様はそれを本にしとったわね。

 

 

―どんな本を読まれるんですか。

 

仏教関係のが多いわね。でも、週刊誌も読むけどね。

 

 

―何か趣味などはありますか。

 

墨絵と囲碁だね。囲碁は昔、店の前に円台があったからそこでやってましたわね。そういうことは今、目に触れなくなっちゃったもんでね。

 

 

―墨絵は何歳の時からハマったんですか。

 

墨絵はね、私が50のとき。50のとき、何かやろうかなって思ってね。ちょうどその時に墨絵にハマってね。後ろのふすまの絵も私の先生が書いたんですよ。

 

本日は大変貴重なお話、ありがとうございました。