Seminar, 2015



【卒業論文の概要】

 

加藤雅也「中学校社会科公民的分野における発信型シティズンシップの開発-社会形成力の育成を目指して-」

 本論文は若者の政治意識の低下をきっかけとし、社会形成の育成を目指す発信型シティズンシップを開発した。

 第1章では、市民が参加する社会である、民主主義社会の原理を明らかにし、一教科で民主主義の原理を扱う英国のシティズンシップ教育の理論を分析した。

2章では、英国のシティズンシップ教育を手がかりに、我が国における社会形成力育成論先行研究を分析し、それぞれの課題を挙げた。そして、社会形成力には発信と再構築が必要であることを明らかにし、新たな定義付けをした。

 第3章では、まず前段階で示した社会形成力の育成を目指した発信型シティズンシップの理論の仮説を示した。そして仮説をもとに「ボランティア」に関する授業案を作成し、岐阜県内にあるS中学校にて実践した。対象は中学校第3学年公民的分野である。しかし、筆者の授業力不足はもちろん、発信先との連絡が上手くつかなかったことや、発問が明確でなかったこと、発信と再構築の方法などに問題があったことなどにより、思い通りの授業展開とはならなかった。そこで実際の授業の流れがどのようなものであったかを指導案に書き写し、課題を整理した。そして発信型シティズンシップの理論を修正し、再びボランティアを扱う授業案を作成することができた。

 以上の点から、本研究の成果をまとめると以下の2点になる。

 1つ目は、先行研究における社会形成力育成論の課題を乗り越え、新たな社会形成力育成論の開発ができたことである。

 2つ目は、授業実践を通して、より説得力の高い発信型シティズンシップの理論と授業案を提示できたことである。 


 

林 誠悟 学習者の主体的な学びを目指した社会科教育論の提案-協同的な探究を手がかりにして-

本論文では、社会科教育において学習者の主体的な学びを実現するために、協同的な学び及び探究という学習理論を手がかりとし、社会科授業実践モデルを作成した。

 第1章では、現状の社会科教育の課題を、学習者の主体性という観点から社会科教育における授業方略6類型を分析することにより明らかにした。

 第2章では、先行研究による協同的な学びの定義を分類することにより、協同的な学びの学習形態、学習課題、学習態度、習得内容の特徴を明らかにした。また協同的な学びの定義とその学習効果を基に4象限マトリックスを用いて分類することにより、協同的な学びの4類型を明らかにした。さらに、ガーゲン、デューイのコミュニケーション概念の比較から、他者への共感的な態度及び自省の必要性、その方法を明らかにした。

 第3章では、デューイの探究、バートン及びレヴスティクの歴史的探究理論を協同的な学びの理論と組み合わせることにより、社会科教育における協同的な学びの授業理論を明らかにした。そして、小学校5年生を対象とした学習指導要領社会編の内容()「国土の保全などのための森林資源の働き及び自然災害の防止」において、学習者自身が主体的かつ協同で環境問題概念及びその問題を構築する要素を構築、分析する社会科授業実践モデルを作成した。

 以上の点から、本論文の成果は以下の2点にまとめられる。

 1点目は、協同的な学び及び探究理論により、社会科教育における協同的な学びの理論を構築したことである。

 2点目は、概念を教師から教え込む授業ではなく、学習者自身が主体的かつ協同で概念を構築、分析する社会科授業実践モデルを作成したことである。

 教師の支援、また教師の介入を極力排除し学習者自身で本当に授業を作り上げることができるかについては未だ不明確であり、今後の課題として残っている。

 しかし、先に述べた成果を挙げたことは社会科教育において意義のあることだと考えている。今後も教師として実践を行いながら課題を克服し、学習者の主体的な学びの実現を目指したい。


 

村上拓也『社会科教育における知識と学力像~対象実在論を手がかりに~』

本論文では、社会科教育の課題を克服すべく、科学哲学、とりわけ対象実在論の考えを取り入れた社会科授業をデザインし、その授業理論における知識や力の分類を示した。

1章では、科学哲学、科学的実在論争を分析することにより、科学哲学のそれぞれの考え方を明らかにすることができた。

2章では、社会科の授業理論を科学哲学の観点で分析することにより、社会科の授業理論の問題点について明らかにすることができた。

3章・第4章では、授業の指導案や指導計画、入試問題の分析を通して、現状実践されている社会科教育の課題を科学哲学の観点から明らかにすることができた。

5章では、実際に対象実在論による授業を作成するとともに、他の授業でも通用するような社会科授業理論を作成し、既存の授業理論との比較を通して、本授業理論の特徴を明らかにすることができた。

6章では、第4章で分析を行った入試問題を対象実在論による授業理論を用いて分析を行うことにより、入試問題の問題点や本授業理論の特徴をより明確にすることができた。

以上の点から本研究の成果としては、以下の2点が挙げられる。

1点目は、複雑な実社会に対応できる力を育むことができる社会科授業をデザインできた点が挙げられる。これまでの授業では、単純化された社会を通して法則を獲得するに留まっていた。これでは、もし違う社会に直面したときに対応できない。本研究のような授業の積み重ねによって、複雑な社会でも対応できる生徒を育てることができると考える。

2点目は、科学哲学の考え方を踏まえることによって、社会科教育の課題を論理的に説明できた点である。これまで社会科教育の課題が、社会科教育の理論や児童生徒の実態から述べられるに留まっていた。本研究では科学哲学の観点、とりわけ科学的実在論、対象実在論の観点で社会科教育の課題に論理的な保障を与えることができた。     


土屋健人「小学校社会科における博学連携教育論~実感を伴った理解を目指して~

 本研究では、学校教育の目標である「生きる力」を構成する要素の一つである「確かな学力」のために「実感を伴った理解」が必要であると筆者は考える。そこで、現状の社会科と博物館を学校の授業に取り入れたいわゆる「博学連携教育」を研究し、筆者独自の理論を構築、授業を設計した。

 第一章では、理論の構築のためにまず現状の社会科の分析が必要であるとして、学習指導要領と『新編 新しい社会』シリーズを分析した。その結果、現状の社会科教育は、学習内容に実感を持たせて定着を図ること、社会科教育は問題解決学習を基盤として、学習活動の充実のために体験学習を組み込んで構成されていることが読み取れた。

 第二章では、理論の構築のために、現状の博物館および博学連携教育の分析もまた必要であるとして、博物館の定義や業務、現在行われている博学連携教育を、先行研究や現地調査・取材を通して分析した。その結果、博物館には、教育施設としての側面が存在し、学校との連携は博物館側においても求めれられていること、博学連携には、主に「貸出資料」「出前授業」「協働授業」の三種の形態があることがわかった。

 第三・四章では、第一・二章を受けて、筆者自身が「実感を伴った理解」を目標として、博物館を体験学習として取り入れた問題解決学習に基づく授業実践例を設計した。



2016/3/25

本日は大学の卒業式でした。

我がゼミで1年間共に過ごした学生も、無事卒業致しました。心より嬉しく思います。

ただし、ゼミはまだ終わりません。今後も、実践研究等で継続的に集まる予定です。

後輩への指導・助言を含め、これからも一緒に歩んでまいりましょう。

卒業おめでとう!そして、今後ともよろしくお願いします。


2016/2/4

 

本日は卒論の最終発表会でした。

最終発表会は須本ゼミと合同。発表15分、質疑10分程度で、学会と同じ形で行います。

 

皆さん、1年間かけた研究を端的に整理し、質疑応答を想定しながら、しっかりとレジュメを作成しておりました。夜通し取り組んだメンバーもいるとのこと。大変だったと思います。お疲れ様でした。

後日、HPに卒論の概要を掲載致します。ご質問・ご指摘等ございましたら、いつでもご連絡ください。


2016/2/2

 

本学の卒業論文提出日は2月1日。

我がゼミ生は皆無事に提出を終えました。

タイトルは以下。

 

 

学習者の主体的な学びを目指した社会科教育論の提案-協同的な探究を手がかりにして-
社会科教育における知識と学力像~対象実在論を手がかりに~

中学校社会科公民的分野における発信型シティズンシップの開発-社会形成力の育成を目指して-
小学校社会科における博学連携教育論~実感を伴った理解を目指して~

度重なる長時間ゼミを乗り越え、本当に頑張っておりました。指導教員として誇りに思います。

 

2月5日 の8:45から卒論発表会を行います。場所は教育学部棟の202号室です。

3年生以下で関心のある方も是非参加してほしいと思います。お待ちしております。


 9月26日にゼミ内での卒論中間発表会を行いました。

我がゼミは、現役生が卒業生を招き、卒論の進捗状況を発表します。当日はその発表会でした。


卒業生は我がゼミで卒論を完成させた先駆者。彼らと対峙する日のため、大学へ泊まり込みで準備をした学生もおりました。もちろん、議論の中で現役生の卒論には多くの課題が見つかりました。中には「なぜ、その研究をすすめるのか」「問題意識が不明確」等の、原理的な課題もありました。しかし、寝ずに準備した成果はしっかりと発揮出来ていたと思います。


卒業生も、貴重な休みを返上し、参加してくれました。卒業後もゼミ生と会うことが出来るのは大変嬉しいことです。現役学生と卒業生の皆様、本当にお疲れ様でした。


《2015年度ゼミ開始》

 

2015年度のゼミが始まりました。

今年度は男性4名。

教員採用試験合格を目指しつつ、しっかりと卒論にも取り組んでもらいたいと思います。

 

我がゼミでは、以下4回のイベントがあります。

テーマ発表、田中ゼミ内中間発表(卒業生と共に)、中間発表、最終発表会。

各イベント突破が一つの軸になってまいります。

 

共に頑張っていきましょう。

 


テーマ発表会の様子(須本ゼミと合同)