Seminar 2016

 

 

2017/3/27

 

卒業論文の概要(五十音順)

 

小栗優貴「討議フレームワークを用いた多元的選択肢をつくりだす合意形成学習論-ユルゲン・ハーバマスのコミュニケーション理論を援用して-」

 本論文では、合意形成社会科において合意が一元的なものとなっている現状から、子どもが合意のための多元的選択肢を作り出せるように討議フレームワークを提唱した。

 第1章では、現実社会の分析を行い、現在の社会科教育が民主主義の担い手である市民を育成できていないことを示した。

 第2章においては、市民を育成できていない現在の社会科教育の分析と社会科教育実践の類型化を行った。前者の分析において社会科教育が市民の育成が出来ていない原因は、説明主義の社会科にあることを示した。また後者によって市民性を直接的に育成するためにコミュニケーション論的学習が必要であることを明らかにすることができた。

 第3章においては、ハーバマスのコミュニケーション理論を研究した。そこでは、コミュニケーションが社会を形成していくことに加え、討議においてコンセンサスに達することが社会を秩序立てていくことになることを見ることができた。

 第4章においては、コンセンサスを目標とするコミュニケーション学習である合意形成学習を先行研究から分析した。そこでは先行研究で述べられている合意形成社会科における課題に加え、トゥールミン・モデルの活用の仕方が不十分であること、多元的な合意形成案を作る方略がないことといった新たな課題も示すことができた。

 第5章では、第4章において見ることができた合意形成社会科の課題を乗り越える討議フレームワークを作成し、その詳細について研究することができた。

 第6章では、その討議フレームワークを用いて、「風営法におけるクラブの深夜営業の規制問題」をテーマに授業をデザインした。

 本研究における成果は、以下3点である。1市民性を直接的に扱うコミュニケーションをベースに置いた社会科教育理論を明らかにしたこと。2合意形成社会科における新たな課題を指摘したこと。3合意形成社会科における課題を乗り越えるための討議フレームワークを提案したことである。

 まず1つ目の点は、ハーバマスの述べるコミュニケーションが社会を形成していくとの論からコミュニケーションを用いた社会科は社会形成を行うことを目標にしていることを明らかにした。

 2つ目の合意形成社会科における新たな課題とは①水山のトゥールミン・モデルの扱い方は不十分であり、留意がなされていない。②合意形成が現在の学習方法では、一元的である。以上2点を指摘することができた。

 3つ目の点は、上記の課題点①②を克服するとともに、これまでの合意形成学習で必要とされてきた要素を入れたフレームワークを作成できたことである。本フレームワークでは、理想的発話状態の保証といったハーバマスのコミュニケーション理論を取り入れることもできた。

 

森川菜摘「子どもの発見に根ざした問題解決の理論と実際に関する研究 」

本研究ではまず,知識偏重になりがちである社会科の現状に警鐘を鳴らした。そのような「社会科=暗記科目」というレッテルをなくすために,社会科での問題解決学習の授業を積極的に行う必要がある。しかし現状の問題解決学習では,課題解決学習と混同され,「問題発見」という過程を十分に踏んでいないため,本来子どもたちがもつべき「社会を見つめる力」を十分に養うことができない。そのため子どもたちが社会を見つめ,問いを立てる問題解決学習を行うことでその力を養うことを目的として,先行研究や教科書分析を手がかりに,問題発見を重視した問題解決学習の論理を開発し,具体的なカリキュラム案,そして教科書案を出すことを目標に,本論文を執筆した。

 本研究は,大きく4章に分けて問題発見力を重視した問題解決学習の開発を行い,教科書例を作成した。本研究の流れは以下のようになる。

 第1章では,問題解決能力の定義や類型を明らかにした上で,ジョン・デューイやリチャード・ローティのプラグマティズムの理論から問題解決能力について分析した。

 第2章では,問題解決能力を測定したPISA2003PISA2012を分析し,PISA型の問題解決能力を明らかにした。また日本における問題解決能力の位置づけとして,学習指導要領の中での問題解決学習の位置づけの変遷や小中学校の教科書分析を行い,現状の問題解決学習の「問題発見」という過程を再構築する必要性を明らかにした。

 第3章では,「問題発見」を「社会を見つめる力」とし,社会を見つめ,そこから見出された課題を社会に発信していく「社会問題提起力」をジョン・デューイとヘンリー・ジルーの先行研究から分析した。しかし,実際に提案されていた彼らの研究は主に社会への発信であり,問題を発見する過程の保障は十分ではないことが明らかになった。

 第4章では,問題発見力を重視した小学校の社会科の授業例と中学校の社会科の地理のカリキュラム提案と教科書提案を行った。教科書は「問題発見力」を養うことを目的とし,「問い」について考える段階を充実させた。

 以上の点から,本研究の成果をまとめると以下2点となる。

 1点目は,先行研究における問題解決学習の課題を乗り越え,新たに「問題発見」という過程を重視した問題解決学習の提案ができたことである。

 2点目は,現状の社会科が陥っている問題解決学習と課題解決学習の混同を明らかにし,問題解決学習が社会科で実践できるように教科書の提案を行うことができた点である。教科書案には,実際に指導の際に使う解答例もあり,より実践がしやすいように提案できた。

また本研究では,以下3点の課題も残されている。

 1点目は,PISA調査を完全に分析できていない点である。本研究では,現状で開示されている問題や国立教育政策所が厳選して挙げている問題を主に分析した。しかし正確なPISA調査の分析をするには,より多くの問題を分析できるとより充実した結果を得ることができたと考えられる。

 2点目は,本研究を達成するにあたってカリキュラム開発として現状の中学校社会科の教科書をもとにカリキュラムの再編成を行ったが,実際にそのカリキュラム編成で授業を行うことは可能なのかを示すことができなかった点である。この課題は筆者が教員となった時,実践を行うことによって乗り越えたい。

 3点目は,教科書を使った指導案や授業実践ができていない点である。開発した理論は,教科書提案だけではなく,指導案や授業実践を行うことによってより強固なものとなる。この課題も3点目と同じく,筆者が教員となった時,実践を行うことによって乗り越えたい。

 

渡邉貴也「社会科教育における政治リテラシー育成論-反省的実践家の育成を目指して- 

本論文は,現状の主権者教育の改善のために,主権者を直接的に育成する英国シティズンシップ教育と現状の日本の主権者教育の中心である社会科の公民的分野の双方を分析し,明らかになった課題を克服する主権者教育の理論を開発し,理論を具体化した社会科の授業・カリキュラムを作成した。

第1章では,シティズンシップを「シティズン(citizen)」と「シップ(ship)」に分けて,それぞれの概念を探ることでシティズンシップの捉え方について,シティズンシップの歴史的変遷をたどることを通して,現代に求められるシティズンシップについてそれぞれ明らかにした。

第2章では,英国の政治学者バーナード・クリックの思想を探ることを通して,クリックの主張するシティズンシップ教育の概念と理論について,シティズンシップ教育において重要な要素である政治リテラシーの概念とその育成理論についてそれぞれ明らかにした。

第3章では,クリックの提唱するシティズンシップ教育の理論に基づき,英国シティズンシップ教育を展開する英国に焦点をあて,実際に使用されている教科書の分析を行うことで,英国の主権者教育の理念と実践,課題点について明らかにした。

第4章では,現状の日本の主権者教育の中心である社会科の公民的分野に焦点をあて,第3章と同様に実際に使用されている教科書の分析を行うことで,日本の主権者教育の理念と実践,課題点について明らかにした。

第5章では,第3章で明らかにした英国シティズンシップの課題と第4章で明らかにした日本の社会科の公民的分野の課題の双方を克服するために,ジョン・デューイが提唱する反省的思考の概念を発展させたドナルド・ショーンの反省的実践家の概念を用いた社会科教育における政治リテラシーの育成論,その理論に基づいた授業案,カリキュラムを示した。

以上の点から,本研究の成果をまとめると以下の2点になる。

1点目は,主権者教育として実際に用いられている英国シティズンシップの教科書と日本の社会科の公民的分野の教科書を分析し,日英の主権者教育の課題を明らかにすることができた点である。

2点目は,ドナルド・ショーンの反省的実践家の概念を取り入れることで,日英の主権者教育の課題点を克服した政治リテラシー育成の理論とそれに基づいた授業案,カリキュラム案を示すことができた点である。

 


2017/3/24

 

本日は現ゼミ生(四年生)と新ゼミ生(三年生)との顔合わせでした。四年生から卒論の進め方等の説明があり、その後、新しいゼミ生が卒論のテーマを発表。皆で議論を行いました。

 

四年生は相変わらず鋭い質問やコメントを投げかけ、とても頼もしく思いました。我がゼミは現役生の卒論指導に往年の卒業生も加わります。皆で現役生の研究を盛り上げて行きたいと思います。新ゼミ生は彼らを打ち負かすべく、頑張ってもらいたいと思います。

 


2017/2/10

 

先日は卒業論文発表会でした。我がゼミは以下の論文を執筆。その成果を発表しました。

 

・討議フレームワークを用いた多元的選択肢をつくりだす合意形成学習論
 -ユルゲン・ハーバマスのコミュニケーション理論を援用して-

・子どもの発見に根ざした問題解決の理論と実際に関する研究 

・社会科教育における政治リテラシー育成論-反省的実践家の育成を目指して-  

 

皆さん、卒論の枚数は100枚(13万字)を超えました。もちろん、枚数が全てではありませんが、これだけの量を執筆するだけでも相当の努力が必要です。本当によく頑張ってくれたと思います。

 

 

ただ、我がゼミはまだ終わりません。2月には英国人研究者を招聘し、国際会議を行います。まだまだ活躍してもらいたいと思います。引き続き、よろしくお願いします。



2016/9/23

 

先日は卒業論文の中間発表会を行いました。

我がゼミでは、卒業生と共に現役生(学部・院生)の卒論を検討します。今回は祝日にも関わらず卒業生ほぼ全員の参加を頂き、学部(3名)、院生(1名)の論文を検討しました。タイトル(仮)は以下。

 

・子どもの探求に根ざした問題解決学習の理論と実際

・「討議の場」を子どもが自らつくるための社会科教育実践ーユルゲン・ハーバーマスのコミュニケーション理論を援用してー

・過去から省みるシティズンシップ教育論ー反省的思考を手掛かりにー

・交渉スキル育成を目指す社会科教育論の開発と実践

 

学生によってはA4で33枚のレジュメを作成。皆さんしっかりと準備をしてくれておりました。

卒業生のコメントもさすがです。会は4時間半に渡りましたが、彼らの論文を破壊的に叩くのではなく、先へ進めるために愛のある建設的な議論が展開。個人的にも、卒業生の成長を垣間見た貴重な時間でした。

卒業生の皆さんは、自身の持ち場で。現役生の皆さんは卒論。引き続き頑張って欲しいと思います。


2016/7/30

 

先日は前期最後のゼミ。各自、教員採用試験を受けた学生、大学院入試を控えた学生等、状況はバラバラですが、皆さん自身のキャリアをしっかりと考え、前に進んでくれています。(一人体調不良でお休みです)

 

ゼミ後は、我が研究室に来ているドイツ人留学生を送るfarewell party。ゼミ生も、英語でのディスカッションにだいぶ慣れてきた様子。次の再会を約束し、終了しました。


2016/6/24

 

昨日は、卒業論文の中間発表会を行いました。今回は昨年度卒業生の前で現役生が途中経過を報告。先輩方から様々な指摘をもらい、新たな課題が見えてまいりました。

 

次回は9月末。今度は我がゼミの卒業生全員が集まります。現役生は各種試験準備を進めつつ、引き続き頑張って欲しいと思います。

(当日の写真を撮り忘れましたので、ゼミの写真を掲載しました)


2016/4/23

 

ゼミ生、及び4月から我が研究室に所属しているドイツからの留学生と共に、金華山へ登りました。

天気は快晴。片道1時間の登山。大学から離れた空間で色々な話ができました。

 

皆さん、意欲的に研究へ取り組んでくれるとのこと、期待したいと思います。


2016/4/10

 

本年度のゼミが始まりました。

我がゼミは学部3名、大学院1名、留学生(ドイツから)1名の、合計5名。

それぞれ、自身の研究をしっかりと進めて欲しいと思います。

 

学部ゼミでは、4回、研究を発表する機会があります。

特に、ゼミ内の研究発表では、ゼミ卒業生も来てくれます。

しっかりと準備を進めてまいりましょう。