2019年度 ゼミ

 

 卒業論文 及び ゼミ生との活動等

 

 

卒業論文 概要

西角綾夏「コミュニティ・スクールの実態から見る学校と社会の関係性ーJ.デューイの教育理論を用いてー」

 

本研究では、学校における子どもたちの生活や学習内容が実社会と乖離しているという問題意識から、学校と社会の関係性について原理面と実証面から検討した。本研究の流れは以下の通りである。
第1章においては、アメリカの哲学者J.デューイの教育理論を取り上げ、子ども観・学校観・社会観という3観点から先行研究を分析し、学校と社会の関係性について原理的に明らかにした。
第2章においては、地域とともにある学校づくりを推進する仕組みとしてのコミュニティ・スクールを取り上げる。ここでは、コミュニティ・スクールが学校と社会の乖離を解決する一つの策であると考え、その理念について明らかにした。
第3章においては、コミュニティ・スクールの実態について扱う。ここでは、全国的な実態やインタビュー調査を行った自治体の活動状況について明らかにした。
第4章においては、コミュニティ・スクール設置校にて行ったインタビュー調査の分析を行った。ここでは、デューイの原理を明らかにする際に設けた3観点を用いてコミュニティ・スクールの関係者の思想について明らかにした。
第5章においては、これまでの分析をふまえ今後目指すべき学校と社会の関係性を理念的側面と実証的側面からそれそれ提唱した。
以上より、本研究の成果は3点ある。
1点目は、学校と社会の関係性についてデューイの教育理論をもとに原理的に明らかにしたことである。
2点目は、コミュニティ・スクール関係者にインタビュー調査を行ったことである。
3点目は、インタビュー調査によって得られたデータから、学校と社会の関係性について実証的に明らかにしたことである。
また、本研究の課題としては、以下の2点が挙げられる。
1点目は、卒業研究の日程の関係上、全国的な調査が出来なかったことである。
2点目は、筆者がインタビュー調査に不慣れであったため、聞き取りが十分に出来なかったことである。
本研究の成果と課題を糧に、今後も学校と社会の関係性を問い続けながら教育活動に携わっていくこととする。

 

 

 

森 史花「批判的思考力における「反省性」の基礎を養う社会科授業デザイン―音楽を題材としたp4cを用いてー」

 

本研究の目的は2つある。一つ目は、批判の仕方を教えることに留まっている現状の社会科の課題を克服し、批判をしてゆこうする態度を養うための育成過程を示すことである。二つ目に、生徒たちの興味関心を引くことだけに用いられていた音楽を社会科で教材化するために音楽カテゴリーを作成することである。以上の2つを目的とし、本研究では、批判的思考力における「反省性」の基礎を育成することができる授業デザインを提案した。

第1章では、新学習指導要領社会編を基に、新学習指導要領の理念と現代の中学生に求められている力、社会科の現状、課題を明らかにした。

 第2章では、現在までに批判的思考力はどのような定義がされているかを明らかにし、批判的思考力における2つの類型である、「合理性」「反省性」の具体を明らかにした。また、批判的思考に関する先行研究の分析を行なった。それを基に、批判的思考力を育成する授業の課題を明確にし、本研究における、批判的思考力を育成する過程を提示した。

 第3章では、使用する曲の社会科における位置づけを明らかにするため、学習指導要領社会編を基に、音楽の枠組みを作成した。それに基づき、音楽をカテゴライズした。

 第4章では、現状の社会科の問題点を克服するための方法として、本研究における批判的思考力の育成過程を用いた、中学校社会科での育成方略を提示した。具体的には、音楽の歌詞を批判的に検討し、生徒が自ら考えた「問い」でp4cを行い、生徒が「考える」力を育成できる指導案を考えた。

本研究の成果をまとめると以下の二点になる。

一点目は、学習指導要領の改定に伴い、これからの時代で育成が求められている力に、学んだことを使用していこうとする「態度」を含んでいることを明らかにしたこと。そして、他者との協働から視点を広げ、さらに考え続けることができるp4cを取り入れた授業実践例に取り組むことができたことである。

二点目は、音楽は生徒の興味を引くものとして扱われてきた課題をふまえ、学習指導要領社会編を基に枠組みを作成し、音楽をカテゴライズできた。この枠組みを基に、音楽を批判的検討してゆく対象とした授業を考えることができた。

 

 

 

 

鳥村悠登「「社会問題」を分析する社会科学習論社会問題をめぐる言説分析を通して

 

 本研究は、これまでに提唱されてきた社会科教育論では、現代や未来を生きる子どもたちに公民として生きる力を養いきれないという問題意識の下、社会問題を題材として、社会学の手法を用いながら社会そのものを学ぶ社会科学習論を研究した。

 第1章では、実在論と構築主義という2つの社会を捉える大きな枠組みから、既存の社会問題科の研究を考察した。

 第2章では、社会問題の社会学の諸研究を参照し、社会問題の構築性を子どもたちが自覚できる「社会問題」分析学習という新しい社会科学習論を提示し、その教育原理、ならびに昨今注目を集める見方・考え方について考察した。

 第3章では、中学校社会科公民的分野における「社会問題」分析学習のあり方について、カリキュラムの形で提示を行った。そして、「社会問題」分析学習の実際として、単元「私たちと校則」と単元「私たちと地球温暖化」を開発した。

 以上をまとめ、本研究の成果として、以下3点を挙げたい。

1に、「社会問題」分析学習の教育・学習原理を提示することによって、社会の構築性の理解という、現代社会の市民に必要となる公民的資質を踏まえた社会科の目標を明らかにした。

2に、中学校社会科の公民的分野において、現代社会の事象である「社会問題」を内容とする、社会科授業を開発したことである。

3に、社会問題の社会学の研究を手がかりとし、社会学的に社会的事象を捉える見方や考え方を提示できたことである。

 以上の成果から、言説を手がかりとして、子どもたちが社会の構築性を理解できる社会科学習論を明らかにできたと結論づける。

 

 

 

2020/3/29

 

25日は岐阜大学の卒業式。本年は諸般の事情により式典は無し。その他、色々な行事がキャンセルとなりましたが、卒業生は皆、無事に大学を羽ばたいていきました。

 

我がゼミの3名は、4月から県内小学校教員、県内中学校(社会科)教員、大学院進学(他大学)となります。各自、大学やゼミでの経験を存分に生かして、活躍して欲しいと思います。

 

我がゼミは卒業後も研究会等で繋がっていきます。また夏にお会いしましょう。卒業、おめでとう!


2020/2/6

 

本日は学部生の卒論発表会(審査会)。我がゼミは以下の卒論となりました。

 

・西角綾夏「コミュニティ・スクールの実態から見る学校と社会の関係性-J.デューイの教育理論を用いて-」

・森史花「批判的思考力における「反省性」の基礎を養う社会科授業デザイン-音楽を題材としたp4cを用いて-」

・鳥村悠登「『社会問題』を分析する社会科学習論-社会問題をめぐる複数の言説分析を通して-」

 

西角氏は、岐阜と長野県塩尻にあるコミュニティ・スクールへ長期間フィールドワークを行い、それを元にした質的研究を進めました。

森氏は、新学習指導要領の構造を分析し、音楽(SEKAI NO OWARIの全63曲)を用いて行う社会科の可能性を、p4cと絡めて論じました。

鳥村氏は、科学論・知識論・社会論を踏まえ、斐太高校の「校則問題」を事例に言説分析を行う社会科学習論を作りました。

 

各自、教採や大学院入試を突破しつつ、精力的に頑張ってくれました。嬉しく思っています。是非、今回学んだ研究方法を、それぞれの場で活用して欲しいと思います。ゼミ生の皆さん、ご苦労様でした!(卒論の概要は、後日HPに掲載いたします。)

 

 

 

 

2019/12/1

 

先日は中学生と政治家が社会を議論するDiscuss Our Societyを開催。岐阜市内の4つの場所を指定し、その場所を政策的にサードプレイス化することを試みました。

 

例えば、「政策案:ぎふ 清流 あゆの酒場」では、現状で稼働率が低い公共施設で定期的にパブリックビューイング、イルミネーションを実施、また高校生が滞在出来る様々な企画を行う。その原資(年間2160万円)を確保するために、時間限定でターゲットを限定したアルコール販売等を行い、様々な世代を時間・時期を分けることで巻き込む戦略を立てておりました。合計5つの政策が立案されましたが、どれも非常に魅力的。若い世代の価値観・観点を大事にしつつ、現状(行政が実施するサードプレイス政策批判)を踏まえ、データに基づいた現実的な案をデザインしておりました。

 

複数の議員から「是非議会の場で検討をしたい」というコメントも頂き、立案した政策が将来的に実現する可能性を含み込んだ提案の場となりました。(当日の様子は12月6日のCCNテレビで放送されます。詳細をご希望の方はご連絡ください。)

 

本企画は多くの方に支えられております。

今回参画いただいた議員は、大野議員(自民党, 参議院議員)、伊藤議員(国民民主党, 県議会議員)、中川議員(共産党, 県議会議員)、和田議員(自民党, 市議会議員)。チーム教員は、三浦先生(岐阜高校)、岸先生(附属中)、矢島先生(附属中)、稲垣先生(真正中)、前田先生(美濃中)。チーム岐阜高校として、この10月に岐阜高校に新設された「政治と高校生の架け橋を創る会」から3名。我がゼミ生4名(都築さん、鳥村君、森さん、西角さん)。ゼミ卒業生で現在愛知教育大学の大学院生の中山君も来てくれました。

その他、附属中の副校長先生、附属小の先生方、岐阜県選挙管理委員会の方、他の学校の先生方、そして東京からも参観を頂き、多くのご参加を頂きました。本当に多くの方々に支えられて、実施ができました。

 

今回は、社会で注目されている「居場所(論)」を批判的に検討すること。その上で、それを政策的に分析・創造・立案し、現実社会の文脈(議員を含めた場)で議論することを主眼としました。可能であれば、本企画を継続的に実施して参りたいと考えております。お礼旁々、引き続き多方面からご指導・ご支援を頂けましたら幸いです。よろしくお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

 

2019/11/28

 

週末はDiscuss Our Society 3を開催します。今年のテーマはサードプレイス。政治家と中学生が政策としてサードプレイスを考え、議論を行います。

https://www.nobolta.com/discuss-our-society/

 

今年は皆でパーカーを作りました。我がゼミ生がデザインをしてくれ、お洒落な衣装となりました。現在、ゼミ生が中心となって準備を進めてくれておりますが、同じパーカーでさらに気分を盛り上げ、当日へ向かいたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

2019/10/1

 

ソーラー武道館、無事全てのプログラムが終了しました。2日目のギターアートは3回に分けて整理券を配布しましたが、チケットは各回1分以内に完売。プラチナチケットと化しました。ただ、学生らの協力の下、大きな混乱は無く、大盛況に終わりました。(最優秀賞にはGibsonより新品のギターが贈呈されます。現在審査中ですので、ご参加頂いた方はもうしばらくお待ちください)

 

巨大なフェスへの参戦。初めての試みで色々と手探りで進める形ではありましたが、附属学校や近隣の学校、および多くの先生方に助けていただき、最終的には成功裏に終わりました。中でも、連日スタッフとして活躍して頂いた美術講座、社会科講座の学生には心より感謝しております。

 

我が研究室では、今後も色々なプロジェクトを進めてまいります。今回お助け頂いた方々はもちろん、今後も色々な方へお声がけをさせていただくかと思います。是非、皆で面白いことが出来ればと思います。お礼旁々、引き続き、よろしくお願い申し上げます。

 

 

 

 

 

2019/8/24

 

本日はゼミの卒論・修論中間発表会。我がゼミは年に一度卒業生があつまり、皆で現役生の研究を検討します。本年度も1期生から集まってくれ、皆で議論を交わしました。

 

今年の研究は、グローバル市民の育成、コミュニティースクールの研究、批判的思考、学校からドロップアウトする若者の思考など、内容・方法共に多岐にわたっています。民間企業や学校など様々な場面で活躍する卒業生からの鋭いコメントを受け、とても有意義な時間でした。

 

ゼミ後は大学近くの蕎麦屋で食事をしながら雑談。時間を忘れて話し込みました。卒業生が大学へ帰ってきてくれることは、とても嬉しいことです。当時の記憶が鮮明に蘇ってきます。会はまた来年の夏ですが、時間が空いた時にでも、いつでも遊びに来てください。

 

 

 

2019/6/12

 

先日は卒業論文の中間発表会でした。今年度、我がゼミ(学部)は3名。 今年は、グローバル市民の育成、音楽を用いた社会科、コミュニティー・スクールの分析など、多種多様です。質的調査を含めて、色々と試みております。

 

まだまだ荒削りではありますが、徐々に方向性が定まってまいりました。教員採用試験の対策を進めつつ、頑張って欲しいと思っています。